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感動ポルノ「アイ・アム・サム」を観て吐いた話

アイ・アム・サム

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 今月の頭にBS12で放送された「アイ・アム・サム」の録画を消化したのですが、胸が気持ち悪い空気でいっぱいになってしまったので、ここで吐き出せさて下さい。前知識としては、障害がテーマらしい、ネットでの評価が高い(yahoo映画4.2/5)という点は知っていて、あらすじは全く知らない状態で鑑賞しました。

 

 ざっくりあらすじを説明すると、知的障害を抱える父「サム」が、ホームレスの女が出産した娘と、二人で生活することになります。(母は、開始早々「子供なんて欲しくなかった」と、出ていきます。)

なんやかんやあって7歳になったルーシー(クソ忙しい育児の時期は飛ばされ)は、サムの知能を追い抜いてしまします。それをみかねた地域のソーシャルワーカーが、サムには父親としての能力が足りないとして、ルーシーは施設に送られ二人は離れ離れになってしまいます。はたして、サムは愛する娘を施設から取り戻すことが出来るのか!?というのが大まかな流れです。
 いくつかひっかかったポイントがあるので、順を追って説明します。

①変に都合が良いせいで、社会派映画ではなくただの感動ポルノになっている

 前半は、やはり知的障害の壁がサムに立ちはだかり、暗い場面が続きます。娘がサムに気を遣って文字が読めないふりをしたり、弁護士がとりあってくれなかったりと、冷たくも現実的なシーンが続きます。

 個人的に、障害をテーマにした映画で感動モノだと「チョコレートドーナツ」とかは好きなんですよ。そちらはゲイのカップルが育児放棄されたダウン症の子どもをひきとるものの、やはりソーシャルワーカーに引き離されてしまうといった物語なのですが、「楽しいシーンは楽しい」んですよ。ラストは滅茶苦茶暗いものの、障害を抱えた本人が二人と触れ合うことで、ポジティブな気持ちになったり、成長する過程がしっかりと描かれています。

 

 

 しかし、アイ・アム・サムでは、ポジティブな場面がとても少ないんですね。なので、引き離されるとなってもあまり感情移入できませんし、施設の人間からすればある意味当然の処置なのですが、本作では一方敵に国側が「悪」として描かれています。

 そもそものテーマが障害を抱える父と娘間の家族愛なので、ここまでは僕の好き嫌いの問題で映画としては良いものだと思います。障害をテーマにした映画が、全てポジティブに描かれていてもおかしな話ですからね。しかし、問題はこれからです。

 

 正直どの辺りから気持ち悪さを感じ始めたのはわかりませんが、ルーシーが里親にひきとられた辺りだと思います。なんとかまたルーシーと一緒に暮らしたいサムと、父を思い続けるルーシー。なんやかんや周囲の人が協力してくれて、ついにルーシーを取り戻します。

 前半あれだけ暗く冷たい社会の目が描かれていたにも関わらず、後半になって急に映画が始まったのです。

 個人的に、「フォレスト・ガンプ」はそこまで嫌いではないんですよ。そちらは障害を抱えるガンプが、何故か社会で無双する話なのですが、作品として一貫性があります。俗にいう「なろう」系のよう感じで、映画としてはよくできています。歴史背景も描かれたりしてますしね。

 しかし、アイ・アム・サムでは、全体の一貫性がありません。まぁ親子愛のテーマとしては一貫しているのですが、あまりにも不自然で強引な感動の路線に舵を切るのが、本作の吐き気がする点です。余りにも都合が良すぎるんですね。いや、あんだけ現実見せておいて、最後は結局24時間テレビかよ!?って。

 

②キャラが薄い

 結局、サムは知的障害を抱えていても娘の為に頑張るパパとしか描かれていないんですよ。サムには同じく障害を抱えた友人が居るのですが、サムには協力的なものの、「キャラ」としての個性の開示が一切ないんですね。ただのモブになってしまってるんです。

 サムがルーシーを取り戻す裁判にあたって、協力してくれる弁護士が居ます。彼女は、娘を失い自暴自棄になっているサムに

「私は夫に私より優秀な女と浮気されていて、息子にも嫌われているダメな母だ、私だけがダメなの・・・」

と、打ち明け慰めます。彼女は健常者ですが、別に障害を抱えても抱えていなくても、つらいことは皆起きるから、サムも娘を取り戻そう!と。

 彼女は唯一感情移入することができるキャラクターですが、ほう少しサムの友人であったり、施設の人間を完全な「悪」として描くのではなく、キャラとして掘り下げてくれればな・・・と個人的に感じました。

 

ビートルズの曲がカバー

 これは権利の都合だったりで仕方ないのかもしれませんが、あれだけビートルズを散りばめておいてカバーなのはどうなんでしょう。個人的には、「I Want Hold Your Hand 」みたいなテンポ良くてノれる曲が好きです。

 本作では「Here Comes The Sun」がキーワードなので、末期のビートルズ好きは楽しめるかもしれませんね。

 

終わりに

 ワンピース等の感動ポルノ好きの方なら楽しめると思いますが、僕にはどうも合いませんでしたね。前半で変にネガティブ要素を入れる必要あったのかな、と。親子愛を描きたいのか、社会問題を描きたいのかが、とても中途半端でした。