笑顔の意味
「お前たちは知っているのか?ナナリーの笑顔の意味を」
「ナナリーは目も見えず、歩くこともできなかった」
「ナナリーは・・・ナナリーの笑顔は・・・せめてもの感謝の気持ちなんだ!」
飲食バイト戦士の俺だが、最近職場に障碍者雇用枠で雇われた人がやってきた。
彼女は決まった単語しか話すことができず、会話も少しオウム返しになったりする。
机に置いてあったクリアファイルには、ドラえもんや忍者ハットリくんのシールが貼ってあり、脳が成長できていないのかもしれない。
彼女の仕事は洗い場のみ。
シフトに関しては普段の+1なので問題ないのだが、はっきり言って邪魔である。
彼女は非常に声が高く、声優の金田朋子のようなノイズ声。
それに加えて、彼女は声のボリュームのコントロールが苦手なのである。
それでも、僕を含めた職場の性格が腐りに腐ったおばちゃん連中も彼女のことは嫌いにはなれないのだ。
彼女は仕事が苦手で、当然周りが手助けをしなくてはいけない。
人間はなにかと理由をつけたがる生き物で、僕が彼女を助けるのはたとえ仕事上の理由であっても、脳が勝手に
彼女を助ける = 彼女のことが好きだから
と理解しているのだ。
それが例え男であっても、同じくlikeと考えるのに変わりはない筈だ。
そう、人はなにかを「する」時に好きになるのだ。
持ちつ持たれつの関係というものは理にかなっているし、乙武さんがモテモテなのも頷ける。
そして彼女は、常に笑顔なのだ。
いつも口が半開きなのは、嚙み合わせが悪いせいかもしれないが、歯を出して笑っている。
いや、ごめんやっぱ無理。マジで。
本人も障害を持って生まれてきたかった訳ではないだろうし、誰も悪くはないと思うよ。
企業も雇わないといけない理由があるし、店舗のシフトに入るのも仕方ないと思う。
でも金田朋子が六時間横に居るのは流石にキツくね?