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神アイドルと化した俺


 2018年3月9日 13時40分
俺は神アイドルになった。

夢に見ていた称号だが、喜びと共にとてつもない虚無感が襲い掛かる



 「双生の陰陽師」からirisを知り、前々からプリパラは気になってはいたのだが、踏ん切りがつかずにいた。


そんな中始まったのが、「アイドルタイムプリパラ
北条そふぃ登場回で虜にされた僕は、気が付けば一ヶ月たらずで「プリパラ」全話を完走した。


dtvの無料期間中に終えなければいけなかった背景もあるのだが、それにしてもここまでアニメにのめり込んだのはギアス以来である。


 特に好きな話がガァルルがそふぃとの接触で言葉を話せるようになるエピソードだ。
他にもそふぃがソラミスマイルに加入する話やファルルを助ける話があるが、共通するのは優しさだ。

彼女らの無垢な優しさはとても美しく、そふぃらが人間として成長していく過程に僕は胸を打たれた。

  
 一時期ガァルル推しになった時期がある。 

第104話 プリパラの終盤で、「スーパーサイリウムコーデ(レアアイテム)」を上位アイドルが獲得していく中、ついにガァルマゲドンにもその時がやってきた。


が、「サイリウムコーデ」を手に入れたのは同じグループのあろまとみかんのガァルルを除いた二人だけだった。
当然あろまとみかんがガァルルを気遣うのだが、ガァルルは言う。

「問題ないガァル!ガァルルもすぐ追いつく!スーパーサイリウムコーデ手に入れる!
今日がダメなら明日、明日がダメなら明後日、どこまでいっても明日ガァル!」


 素晴らしい人間性に惹かれた僕だったが、同時に昔受け取った塾の職員からのメッセージを思い出す。

「人は、人と関わっていくことでしか成長できないので、これからもたくさんの人に囲まれて酸いも甘いも色々な経験をして素敵な男性になってね。」

 彼女の言葉は的を得ている。
プリパラの少女達は神アイドルを目指し時には衝突しながらも、「友達」と一緒に切磋琢磨し、成長している。


 俺はどうだ?成長できているだろうか?
たくさんの人に囲まれているか?
神アイドルの称号を獲得したことで得たものはなんだ?


・・・
目標を失った俺の手に残ったのは、言葉に表せない孤独と虚しさだった。



 初めてプリパラの筐体に座ったのは2017年11月23日
元々プレイする気はなかったのだが、映画までの時間潰しで渋谷の隅にあるゲームセンターへ向かった。

当然選んだキャラクターはガァルル
その日は20プレイしたのを覚えている。


 今年の四月にプリパラが終了し、「プリチャン」に移行することが発表された時、僕は焦った。

 元々ゲームの称号はある程度のものは取る癖があったので、四月までに神アイドルにならなければ、と一種の強迫観念に狩られた。

 僕は超効率厨になった。
トモチケは、ボーナスが一番乗る二枚をずっと使い続けた。
コーデも性能重視だ。
思えば、少しつまらなくなったのはここからだ。

純粋に「プリパラ」を楽しむ気持ちを忘れてしまったのだ。


 プリパラはいわゆる「おばさま層」の割合が高い。
時間帯によるかもしれないが、横に座るのは大抵おばさまだ。
一人ではなく、二人、三人だったりもする。

 正直めちゃくちゃ痛いしキモいと思うが、少し羨ましいと思う自分が居る。

僕はプリパラを一緒にプレイする友達が居ないから、当然のことだ。
流石にリアルの友人を誘うのはあり得ないし、かといってネットにそういった繋がりを持っている訳でもない。

 そんなおばさま方も大抵はネットからの関係なんだろうが、正直そこまでして得たいものでもない。ささやかで本当に小さなものだからだ。


それでも、そんな微々たるものでも、正直羨ましい。


 プリパラにはペアモードという二人プレイがある。

一人でやってみたが、左右非対称の動きなので判定が酷いものだった。

そして、忘れてはならない。
プリパラには「トモチケ」がある。

トモチケはゲームの終わりに一枚排出されるフィルムについているもので、他者と交換してライブ前にスキャンするとそのアバターが登場する。
ステータスも上がるのだ。

大きいゲームセンターや家電量販店だと、トモチケ交換所というものがある。
僕への救済措置である。むしろ交換所でしかトモチケパキッたことない。
ありがたいことなのだが、やはり寂しさはつきものだ。



 プリパラを初めて間もない頃、システムがよくわからなかった僕が、隣に座っていた小学3年生くらいの女の子に話しかけたことがあった。


彼女はアイテムをたくさんもっていて、「ジュエル」というアイテムを「貸しましょうか?」と声をかけてくれたのだが、恥ずかしくなってしまった僕は

「それを買えばいいんだね、ありがとう」
 
 と拒んでしまった。

彼女の純粋な優しさに素直に甘えることができなかった僕は、酷く後悔した。
トモチケも、僕から話かければ交換してくれたに違いない。


 その時、時刻はもう21時を回っていた。
夜遅くに小さな女の子がゲームコーナーの一角に座っているのを僕は内心凄く心配していたのだが、彼女は2回程プレイした後、母親と元へと去っていった。


 プリパラをやっていると、闇を感じることがある。

当然僕もその一人なのだろうが、スーツを着てポケモンガオーレ、ムシキングに連コする会社員、夜遅くに小学生だけでDBし続ける少年、メンヘラオタサーの姫と激臭がする男のカップル、ゲームコーナーに佇む親子

深淵をうんたらはまさにこのことだな、と感じる。僕も同族なのかもしれない。


 別に悪いことではないのだが、後ろめたさのようなものを感じているのは決して僕だけではない筈だ。

それでも、心の居場所がないよりはずっとマシである。



 「プリチャン」が始まってからは、僕はもう二度とゲームセンターに足を運ぶことはないかもしれない。
足を洗ういい機会だ。



それでも、なんだかんだプリパラは楽しかった。


俺もそふぃ様みたいに、ガァルルみたいに、なりたいな・・・